先日、患者さまのおひとりが、「富士山が白く雪をかぶっているよ」と教えて下さいました。
富士山に本格的に雪が積もり始めるのは9月の末頃からだそうで、そこから徐々に雪を積もらせていき、冬の富士山らしい姿になってゆくそうです。
さて、今週12月7日から、二十四節気における「大雪(たいせつ)」に入ります。
「雪いよいよ降り重ねる折からなれば也」(「暦便覧」より)
山の峰は雪をかぶり、平地にも雪が降るころで、本格的な冬の到来を意味します。
白く雪化粧した富士山が見えたことからも、季節が二十四節気通りに循環していることを実感しますね。
季節の移り変わりは、人の身体にも影響を与える、ということは何度かブログに書いてきました。
そこで今日は、冬の風や寒さに影響を受けることでよく見かけるようになる症状「痹証(ひしょう)」について書いていきたいと思います。
「痹証」とは中医学的な言葉で、風、寒、湿などの邪が、虚に乗じて経絡に侵入し、気血を阻滞した状態をいいます。
わかりやすく言えば、風、寒、湿という外界の自然現象が邪(外邪)となって体の弱って抵抗力のないところにとりつき、人体の肌表、経絡、関節などを侵して気血の運行がスムーズでないか不通になる病態です。
その結果、筋肉、骨、関節のだるい痛み、痺れ、重だるさ、運動制限、腫脹などの症状が現れます。
西洋医学的には、関節リウマチ、慢性関節炎、坐骨神経痛、頚椎症、五十肩、筋肉痛、痛風、神経痛、ぎっくり腰などが相当します。
「痹証」は侵入する邪の種類によって「風痹(行痹)」「寒痹(痛痹)」「湿痹(着痹)」そして、これに「熱」を加えて「熱痹」の4つに分けられます。
行痹は、風邪によって経絡が侵襲されたものをいいます。風は動的・流動的・軽い性質がありますので、痛みの箇所は一定ではなく、あちこちの関節や筋肉に症状が出ることが特徴です。他の痹証に比べ、痛みはあまり強くありません。初期では悪寒、発熱、ゾクッとするなどの症状を伴うこともあります。治療方法は「去風通絡、散寒去湿」(入ってきた風邪を外に追い出し、同時に冷えと湿気を取り除く)
痛痹は、寒邪によって経絡が侵襲されたものをいいます。寒邪には引き締め、固まりやすい性質がありますので、血流を著しく停滞させ、ギュッと縮こまらせるために関節が引きつり、曲げ難く、強い痛みが感じられます。痛みの部位は固定し動かず、刺されるような鋭い痛みが特徴です。痛みや引きつりがあるところは、冷やすと悪化し、温めると楽になります。治療方法は「温経散寒、去風去湿」(経絡を温めて冷えをとり、同時に風と湿を取り除く)
着痹は、湿邪によって経絡が侵襲されたものをいいます。湿邪は粘着で停滞させる性質がありますので、関節が腫れて、重く感じ、動かしにくく、固定した箇所の痛みで、時に皮膚や筋肉が痺れる症状も見られます。局所に冷感がある場合があり、雨が降った時や湿気の強い時に悪化し、乾燥したところにいると楽です。治療方法は「去湿通絡、去風散寒」(湿気を取り除き、経絡を通し、同時に風邪と冷えを取り除く)
熱痹の症状は、熱症状です。関節や筋肉が赤く腫れ、熱感をもつ炎症症状がメインとなってきます。冷やすと症状が軽減するという特徴があります。治療方法は「清熱利湿、去風活血」(熱と湿気を取り除き、同時に風を取り除いて血流を良くする)
痹証には、西洋医学では完治困難な疾患に位置づけられるものも含まれていますが、東洋医学では、その原因・治療法はとてもシンプルに整理されており、鍼灸治療をすることで良い結果を得ることはあります。
しかし、前述しましたように、この病態は「初めに虚ありき。」の前提がある通り、こういった関節痛や神経痛を起こす方は元々の体質にトラブルの原因があることが多いです。
つまり、過労、加齢、睡眠不足、暴飲暴食や偏食などで体に弱りがある方は、外からのあらゆる刺激に弱くなり、普段は何ともないような気候の変化も邪として受け入れやすくなるので、普段の生活から注意することが必要です。
では、皆さま、冬の寒さにお身体冷やさぬよう、大雪に 大切になさって下さいませ。
おわり!