前回、めまい・ふらつきは、内風と関係がある場合が多い、ということをお話ししてきました。
今回は、めまいの原因と発生のメカニズムにはどのようなパターンがあるかを見ていきます。
めまいは、中医学の教科書「針灸学[臨床篇]」によりますと、
「目がかすんで目の前が暗くなるのを「眩」といい、ぐるぐる物が回って見えたり、物が揺れ動いて見えるものを「暈」という。この2つはよく同時に起こるので「眩暈」と称している」
とあり、
眩暈の起こるメカニズムとしては、
1、肝陽亢進
2、痰濁
3、気血両虚
4、腎精不足
の4つの分類が挙げてあります。
では、これらを解説していきます!
1、肝陽亢進
東洋医学の古典である「黄帝内経(こうていだいけい)」の中に「諸風掉眩、皆属於肝」との記載があり、これは「風によって引き起こされる症状は、ほとんど肝の臓に関連しますよ」という意味になります。
ならば、肝の臓の働きから説明しなければなりませんね!
やはり異常を知るには、正常を知ることが大切です。
東洋医学の肝の作用は①血を貯蔵し調節する「蔵血(ぞうけつ)作用」と②気を全身にまんべんなく巡らせる「疏泄(そせつ)作用」の二つがあり、体をのびのびした活動へと導く働きをすると考えます。そして、気を順調に巡らせることによって、ストレスから身を守る盾のような働きをしてくれています。これも疏泄作用によるもので、気が順調に流れていれば、身体の中に流れ込んできた嫌なことも病原体もすぐに体外へ排泄できるというわけです。
しかし、ストレスが長期間続いたり、許容範囲を超えた強いものであった場合、肝に変調をきたし、疏泄作用の低下が起こります。すると、気が身体を巡ることが出来ずに滞り(気滞)、滞った気から熱が生じます(火化)。というのも、気は活発に動き、本来熱を帯びたものだからです。自然界の法則では火(熱)は炎上性があり、風を生みます。すると頭痛、ほてり、めまい、けいれんのような上半身に熱がこもったような症状、さらには震えるような症状が出現しやすくなります。この気の上昇がもっとひどくなると、“中風”つまり脳卒中を起こすとされます。
特徴は、ストレスや情緒変動が引き金となって生じやすく、頭痛や耳鳴りを伴うことが多い等です。
2、痰濁
東洋医学における脾の臓は、胃とともに消化吸収を担い、エネルギーである気や血のもとの物質を作り出し、それらを全身に送り出す働きをしています。これを「運化(うんか)作用」といいます。体に必要な飲食物中の水分を吸収調節するのも運化作用の役割です。
飲食の乱れや水分摂取の過多などで、脾の機能が低下すると、水分が吸収されないでそのまま排泄されたり(下痢)、吸収された水分が運ばれず体内に停滞してドロドロの不要物である「痰湿」を生み出します。痰湿は気に伴って動くため、内風や火熱とともに頭部に上昇して耳付近で停滞すると、現代医学的疾患でいうリンパ水腫と同じ状態となり、メニエール症候群の症状(回転性めまい、嘔吐、耳鳴り)を呈します。
特徴は、吐き気や頭重感など湿っぽい症状を伴うことです。
3、気血両虚
東洋医学で脳は血や精や気という栄養物質によって養われ、正常に機能していると考えます。ですから、出血(吐血、下血、女性の不正出血)や胃腸の弱りなどにより栄養やエネルギーが吸収されなかったり、過労によってエネルギーや栄養を消耗しすぎていたりすると、栄養を運搬する気の力が弱まり栄養を頭部まで押し上げられなくなります。すると脳は栄養不足で機能低下をおこし、めまいが出現します。
特徴は、疲れた時や急に立ち上がった時にめまいやふらつきが起こりやすいことです。
4、腎精不足
腎には、脳を養う「髄」が蓄えられています。過労や加齢、慢性的な疾病によって腎が弱ると、髄が不足するため脳の機能低下が起こります。その結果めまいが出現します。
特徴は、健忘や判断能力の低下、聴力の低下などを伴いやすいことです。
10月から始めた「めまいシリーズ」でしたが、今日はもう11月も半ばヽ(゚Д゚;)ノ!!ハヤッ
台風の話をしていたのに、木枯らしの吹く季節ですね。厳しい冬の到来も間近に迫っています。ここでもう一度生活を見直し、風にも揺るがぬ丈夫な身体を作りましょう!
完。